第54章 佐助の不安
(第三者目線)
光秀の体調が峠を越えた頃、佐助は看病を謙信達に任せて人里を探しに偵察に出た。
足の速い佐助が丸一日移動しても野原は続き、大小の沼や湖をいくつか見かけるだけで人の気配はなかった。
佐助「とりあえず南東の方角に来てみたけど検討違いだったかな」
北国に居るのはわかっているので、寒い季節が訪れる前に南下した方がいい。
あの洞窟では北国の冬は越せない。
幼い結鈴を思い、佐助はあともう少しだけと南東の方角へ走り出した。
それにしてもと佐助は走りながら光秀のことを考えていた。
ワームホールの中に居た理由や、深手を負った経緯は本人から聞いた。
本能寺の火事や、不可解な出来事を総合的にまとめると…
佐助「舞さんが変えた歴史を『何か』が元に戻そうとしている」
雷が落ちて火の手があがったのを見ていたはずの者も、そのうち記憶があやふやになり、最後には光秀が火をつけたことになっていたらしい。
佐助「強引に本能寺の変を起こしたんだ」
誰がと問われれば時の神と表現するべきなのだろうか。
佐助「舞さんが変えた歴史が元に戻ろうとしている。
俺が変えてしまった歴史はどうなるんだ?」
元々の歴史では謙信は戦の最中に突然倒れ、息を引きとったことになっていた。
佐助「城に、春日山に戻らなければいいのか?」
そうすれば上杉の軍を率いて戦にでることはない。
単純にそう考えると、広大な地で足止めされている現在は安全ということになる。
佐助「どんな仮定をしても確信はもてないな」
謙信の身を案じ、洞窟に引き返したくなる衝動を必死に抑えた。