第52章 新たなる出会い
『みつひでさん』
呼ばれて目を開けば真っ白な空間の中に居て、知らない幼子と目が合った。
幼子は広い背中の持ち主に抱かれているようで、顔だけしか見えなかった。
(誰だ。俺を知っているようだが…)
落ちているのか浮かんでいるのかわからない不思議な感覚に囚われる。
髪は乱れ、着物がはためいているのを感じるから、どちらかなのだろうが。
幼子がこちらに手を伸ばしてきた。
反射的にその小さな手をとろうとして自分の手が汚れているのに気が付いた。
(お前の手が汚れてしまう)
光秀は顔を横に振った。
綺麗なままでいて欲しい。あの娘のように…
花が咲くように笑い、清らかな心を持っていた娘のように…
気がつけば心を攫われ、あの娘を傍に、と渇望していた。
閉じた瞼の裏に可憐な姿が現れた。
『光秀さん』
愛らしい笑顔で、声で、名を呼んでくれる
『乱世を生き抜き、しわしわのおじいちゃんになるまで生きてくれるよう、切に願っています』
こんな時に舞の文の一文を思い出す。
目を閉じたまま光秀はため息をはいた。
光秀「まだ死ぬなというのか…」
光秀は痛む体に鞭打って幼子の手をとった。
その幼子は薄茶の目をまん丸にして、次には花が咲くように笑った。
『やっと会えた…』
『みつひでさんも、いっしょ』
ぶわっっと風が吹いて幼子の髪が揺れ、そこに、
愛しい女に贈ったはずの織紐が結わえられていた。
光秀「……っ」
声が出せない。
幼子の笑顔を見ることしか…
(そうか、お前はあの小娘の…………)
今度こそ光秀は意識を手放した。