第50章 絶対絶命
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信長が消火を待っている間に雨は弱まり、炎は歓喜したように勢いを強めた。
それは焼き尽くすまでは消えない地獄の業火のようで、消火にあたっている者達を後方に退けた。
寺の中では信長が咳こんでいた。
水で濡らしたはずの身体や外套は炎にあぶられて完全に乾き、煙や熱気で喉を傷めてしまった。
蘭丸を支えている腕が咳き込むたびに大きく揺れ、額や手の甲に玉のような汗が浮かんでいる。
(この命、ここで尽きるか…?)
蘭丸を腕に抱いたまま倒れた。
身体の下にあたっている瓦礫が熱い。もうすぐこの場所にも火が回るだろう。
だが死ぬその時まで諦めるつもりはない。
逃げる手立てが出来た時に動けるよう体力は温存してある。
呼吸のたびに喉がひりつくように痛み、それを逃すために一度目を閉じた。
フワ……
ふとこの場にそぐわない涼やかな空気が頬を撫で、目を開いた。
信長「っっ!!?」
そこに
星屑をまとった女の後ろ姿があった。