第49章 別れの挨拶
謙信「あなた方が手塩にかけて育てた娘を必ずや幸せにする。
時は違えど、俺達を天から見守っていて欲しい」
「っ、謙信様、ありがとうございます」
謙信様の姿が曇って見えなくなった。
両手で口元を覆って俯くと、膝の上に涙がポタポタと落ちた。
寂しいのと、嬉しいのとで頭の中がごちゃごちゃになった。
謙信「今の誓い、二人で守っていこう。共に…幸せになろう」
「は、はいっ」
守るように肩に回った腕は私をしっかりと支えてくれる。
謙信「ほら、笑った顔も見せろ。
泣いてばかりいると心配をかけるぞ?」
長い指が首をくすぐった。
「ふ、や、やだ、謙信様。くすぐったいです」
謙信「ああ、泣きぬれた顔で笑っている様も愛らしいな」
「や、もう…。お父さんたちにバカップルだって笑われちゃいますよ」
謙信「心配をかけるよりマシだろう?もっと笑え」
「ちょっ…アハハハハ、やだ、くすぐりすぎですってば!」
家族との最後のお別れは、謙信様のおかげで笑顔で済ませることができた。