第43章 現代を楽しもう! ❀謙信様の杞憂❀
「フフ、謙信様ったら、それでさっきは慌てた感じで帰ってきたんですね。
心配してくださってありがとうございます。安心、しましたか?」
やや茫然としている謙信の手を舞がきゅっと握る。
その表情は自分の事をこんなに心配してくれてと、嬉しそうでもあった。
謙信「ああ、安心した。あちらでは腹を切って子を産み、傷を縫合するという技術はない。
もしあちらで孕み、子を産む際に一度目の傷が開いたならと肝を冷やした。
それならば子を諦めなければならぬと……」
舞の手を握り返し、やがて二つの腕でひと回り小さな身体を抱きしめた。
その腕は少しだけ震えていた。
「ありがとうございます。謙信様」
舞も目一杯抱きしめ返した。
自分との子供をそんなにも望んでいてくれているのだと実感して、愛しくて、そっと謙信に口づけた。
謙信「礼を言うのは俺の方だ。よくぞ約束を守ってくれた。ありがとう、舞」
謙信は己の不安が杞憂であったことに安堵し、また妻の健気な行動に感謝した。
「ふふ、謙信様との約束は絶対ですから。
もう少し4人で居ましょうね?」
謙信の手が舞の下腹に伸びた。
謙信「4人で過ごしたいと言ってもうすぐ1年だ。お前達を愛おしくかけがえのない存在だと実感できた」
穏やかな表情を浮かべ、舞を愛おしそうに見つめる。
謙信の手は温めるように下腹に置かれたままだ。
謙信「あちらに戻ったなら、早々に祝言を挙げねばならないな。
お前が愛らしくて堪らぬ。愛でて愛でて…なんの対策も講じなければ直ぐにお前を孕ませてしまうだろう」
熱のこもった告白に薄茶の瞳がまん丸く見開かれ、やがて恥ずかしそうに伏せられた。
「それは私も同じ気持ちです。一緒に居れば居るほど謙信様のことが好きになって、その…子供が欲しいなって最近強く思うようになりました」
謙信「っ、そのように思ってくれていたのか」
「んっ!?謙信様、ん、ふ……っ!」
謙信「その日が待ち遠しい」
「ん…はい」
口づけ、愛を伝え合う声はいつまでも続いた………