第41章 現代を楽しもう! ❀信玄の企み❀
――その夜……
「え……明日からお昼のお弁当、要らないんですか?」
謙信「ああ、水筒もいらない」
(謙信、言葉が足りないぞ。その言い方だと…)
心配になって姫を見ると案の定、可哀想なくらいしょんぼりしている。
「わかりました。では明日からそうしますね……」
結鈴「ねえ、パパ。絵本読んで?」
謙信「…わかった」
謙信は明らかに落ち込んでいる舞を気にしつつも、結鈴にせがまれてソファに座って本を読み始めた。
信玄「姫」
「……はい」
傍に寄って話しかけると姫は肩を落としている。
(謙信の奴、理由を言わないから姫が傷ついてるじゃないか)
言うつもりだったのだろうが、結鈴に誘われてしまって後回しにしたのだろう。
「謙信様にお弁当を断られてしまいました。
もしかしてお口に合わなかったのかな…」
信玄「違うよ。舞は仕事をして、短い時間を使って勉強しているだろう?」
舞がテーブルに広げている筆や半紙に目を向ける。
まだ線が不安定で子供が書いたような字だ。
信玄「貴重な時間を弁当や飲み物に費やすより勉強にあてて欲しいんだよ」
思ってもみなかったのか薄茶の目が丸く見開かれた。
「毎日私のお弁当は作らなくてはいけませんし、ついでといってはなんですが全然手間じゃないですよ?」
信玄「そうか…?この間の買い物を見た感じじゃ、謙信のために手の込んだ料理を作ってやってるんじゃないのか?」
舞の視線が気まずそうに泳いだ。
「それは…そうですけど、全然苦に感じないというか…」
頬を赤らめ、もじもじしながら言葉を選ぶ様はハッキリ言って可愛らしい。
謙信と一緒に居るようになって日に日に綺麗になった舞は、ふとした仕草に色っぽさが加わり、目を奪われることもしばしばだ。
「謙信様を想ってお弁当を作る時間も幸せなんです。
それにお昼ご飯は一緒に食べられないけど、同じものを食べてるんだなぁって思うと、なんだか嬉しいんです」
ああ、姫は謙信にぞっこんだな。はいりこむ隙間は1ミリもない。
(だが…隙間がないなら、違う器を作ればいい)