第40章 現代を楽しもう! ❀佐助君の憂い❀
舞さんへの想いは既に結論を出し、見守ろうと決めている。
だけど、だけど………
(これはまずい)
不覚にも動揺してしまった。
表情筋が死んでいたおかげで同僚には気づかれずに済んだけど…
もう一度胸部レントゲン写真に目をやると、そこにはうっすらと舞さんの胸のラインが写っていた。
佐助「もうとっくに諦めてるんだけどな」
こんなのを見てしまったら不可抗力で淡い想いが蘇ってくる。
周囲を和ませる優しい笑み
ほんわかした雰囲気なのに謙信様にズケズケと物言う姿。
牧さんを投げ飛ばした直後の着乱れたしどけない姿。
佐助「はぁ。俺は舞さんが好きなのか?
それとも欲求不満なのか?」
同僚「お?研究一筋の佐助がおもしれーこと口走ってんじゃん!
なんだ?話聞いてやろうか?」
佐助「いや、大丈夫だ。今更どうこうしようなんて思っていない」
好奇心にあふれていた同僚は途端につまらなさそうだ。
同僚「つまんねえな~。あ、それで検査用の血液、多めに3本採っただろう?
1本余ったんだけど廃棄して良いか?」
(廃棄か。せっかく協力してもらったのに申し訳ないな…)
少し考えて結論を出した。
佐助「その血液、しばらく保管依頼をかけようかな。
今は何も検出されなくても後々、何かわかるかもしれないし」
500年前に戻るから後々なんてないかもしれない。
でもまた現代に戻って来る可能性はゼロではない。何かの事情で戻って来るかもしれない。
その時にタイムスリップの手掛かりになるものを残しておこうと思った。
同僚「わかった。良いとこ紹介してやるよ。
それでこれはもう捨てていいのか?」
同僚がレントゲン写真を眼前に持ってくる。
不可抗力でまた胸のラインを見てしまい、喉がコクンと鳴った。
佐助「……」
何度も見てしまったから、しばらく忘れられそうにない。
これから舞さんが居る家に帰るのに、なんだか真っ直ぐ顔を見られそうにない。
(ごめん、舞さん)
なんだか最近憂い事が多い…気がする。