第38章 現代を楽しもう! ❀北の旅編 R-18❀
(何故舞はこうも愛らしいのだろう)
いつ何時(なんどき)も、全部が愛しい。
清らかな美しい心も、優しい光を湛える薄茶の目も、声も、吐息も、くるくる変わる表情も全部愛しい。
俺の妻で良いのかと何度も思うが、だからと言って他の者にやるつもりはさらさらない。
風呂で温まった柔らかい身体を抱きしめた。
謙信「ゆっくり眠れ。ずっと傍にいる」
「は、い………」
余程疲れたのだろう。舞はあっという間に眠りの世界へ引き込まれていった。
謙信「……」
昼間のウェディングドレス姿は美しかった。
神聖な、白銀の世界に取り込まれて居なくなってしまわないかと不安になるほどに。
謙信「ずっと…傍にいろ?」
晴れ姿を見て、お前が居なくなる不安に襲われたなど、誰にも言えない。
俺の気も知らず、舞は少しだけ唇をあけて、スヤスヤと眠っている。
しかし何の夢を見ているのか身体を小刻みに震わせ、クスクスと笑い出した。
「や、だ、……ふふ、けん、し、ん……」
呼び捨てたのか、寝言ゆえ敬称が抜け落ちたのかわからないが、請わなければ呼んでくれない名を口にした。
謙信「お前には本当に参るな」
寝言ひとつで俺の不安を払拭し、胸を多幸感で満たす。
愛しくて、可愛くて、見飽きることがない。
謙信「今夜もお前の寝顔を愛でて夜を明かしそうだ」
布団を掛けなおし、灯りを最小限に落とした。
謙信「愛している、舞」
こうして俺達の結婚式は無事に終わり、のちに出来上がった写真は俺達が生涯、肌身離さず持ち続ける一枚となった。