第36章 現代を楽しもう! ❀年末年始編❀
「謙信様、乾杯!来年もよろしくお願いします」
謙信「来年などと言わず、この先ずっとだ」
「わ、わかっていますよ。年末の決まり文句みたいなもので…」
謙信「ならば良い。乾杯」
「……ふふ、美味しいですね」
謙信「舞と飲む酒は美味いな」
佐助「やっぱり舞さんはお酒を美味しくさせる力があるんだね」
信玄「じゃあ俺にも酒を注いでもらおうか。麗しの姫」
「はい、いいです………よ?」
手に持っていた徳利を取り上げられた。
謙信「信玄、お前はこの徳利のまま飲め」
「え!?そんなお行儀悪いことはしませんよ、ね?」
信玄様に同意を求める。
謙信「信玄は俺と二人で飲む時は人の酒を徳利ごと…む」
「あ」
信玄様がつまみの饅頭を謙信様の口につっこんだ。
あまりの早業に謙信様も躱せなかったみたいだ。
佐助「さすが信玄様」
信玄「今のうちに注いでくれるか?」
「え?ええ……」
謙信様が渋い顔をしてお饅頭を咀嚼している。
嫌いなものとはいえ口から出すのは躊躇われたらしい。
信玄様にお酒を注いであげてから謙信様に声をかけた。
「謙信様、お茶をお持ちしましょうか?」
謙信「いや……今すぐ口直しが欲しい」
「おつまみの梅干しでも食べたらいかがですか?」
謙信様の顔に意地悪な笑みが浮かんだ。
謙信「梅干しは後だ」
さっと伸びてきた手が首の後ろに回り、謙信様の方に引き寄せられた。
「?!」
口付けが……お酒と黒糖の香りがした。
悪戯に成功した極上の笑みと、甘い香りにくらっとした。
慌てて見れば、佐助君と信玄様はテレビの方を見ている。
……不自然なくらいに。
(絶対気を使ってくれてるっ!)
謙信様を睨んでもどこ吹く風だ。
謙信「どうした?来年も、その先もよろしく頼むぞ。舞」
「は、はい」
恥ずかしさを誤魔化して飲んだお酒は
今まで飲んだお酒の中で
一番甘くて
とっても美味しかった……