第35章 現代を楽しもう! ❀お寺編❀
謙信「そうだ。石造りの道を通し、湧き出た水が小川に流れ込むようになっていた」
住職「いつなのか定かではありませんが枯れてしまったのでしょう。では現在ある溜め池は謙信様の案でお造りになったのですか?」
謙信様が視線をご住職に移すと、ご住職が少したじろいだ。
(視線ひとつでも迫力のある謙信様に、内心驚かれているんだろうな)
私の前では激甘な謙信様だけど、人前に出れば厳しさを湛え、どこか近寄りがたい雰囲気が前面に出てくる。
そんなところも凄く惹かれるのだけど……
端正な横顔を見つめながら二人の会話に耳を傾けた。
謙信「500年の間、数多(あまた)の天災、外の国と争うことになると俺の忍びが教えてくれた。
水と休息の場があれば人間は何とかなる。そう考え誰でも使えるような造りにしたのだ」
住職「そうだったのですね。慈悲深いお心のおかげで、事ある毎に周辺の民はこの湧き出る水に助けられてきました。
代々の住職が残した記録にそう書かれております」
涼しげな音をたてて湧き出ている水に、謙信様はしばし見入っていた。