第2章 夜を忍ぶ
好きな人の、昔の恋の話。
少し胸がヒリヒリした。
相手は亡くなってしまっているけれど、謙信様は今でも伊勢姫様を想っているのがわかってしまった。
「大事な話をしてくださってありがとうございます。
謙信様こそ律義な方ですね。『心の内を知りたいのなら、私の話していないことを聞いたら、話してやらなくはない…』あの言葉を守ってくれたのですね」
謙信「お前が話して俺が話さないのは、ふぇあではなかろう?」
「ふふっ。使い方、合ってます。大事なお話をしてくださってありがとうございました」
謙信「お前のような純粋で素直な女は、どうせ可哀想とでも思ったのだろう?」
鼻を鳴らして顔を背けた謙信様が、なんだか私より幼く見える。
傷を必死で隠そうとしている。おこがましいけれど、そう思った。