第31章 パパなんて嫌い
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次の日の朝、私は寝室で結鈴(ゆり)と睨めっこしていた。
といっても決して遊んでいるわけではなくて、お互いの意見に折り合いがつかないがゆえの睨めっこだ。
「ママはパパと仲直りしたの。パパはちょっと間違えて怒っただけで、昨夜ちゃんと謝ってくれたの」
結鈴「やだ、パパ嫌い。ママのことパチンしたもん!」
「だからね、パパは謝ってくれたしママはそれを許したの!
仲直りしたんだよ。だから会ってみようよ」
結鈴「やだ、ママが許しても結鈴が許さない!」
「結鈴~~」
結鈴「だってパパが怒ったらまたママがパチンされるんでしょ?
結鈴、そんな怖いパパ嫌い!」
「だからさっきも言ったけどパパはもうママをパチンしないって約束してくれたの!」
龍輝「ママ、僕お腹すいたー。パパ帰ってきてるんでしょ?
早くあーいーたーいー」
気が抜けるような声にガクっとなる。
「あー、そうだよね。ご飯作らなきゃね」
龍輝「うん!早く下に降りよう!」
龍輝(たつき)は『パパが謝ったんだったらいいじゃん!』みたいに捉えているみたいで、謙信様に会いたくてうずうずしてる。
とっくに着替えが終わっていた龍輝がサッと立ち上がり、私の手を引っ張る。
「結鈴も一緒に降りようよ」
結鈴「や・だ!」
仲直りしたから謙信様に会って欲しい私と、絶対パパに会わないと言い張る結鈴の間ですでに30分以上が経っていた。
(休日だけど、いい加減朝食作らなきゃいけないし少し時間を置いてもう一度説得しにこよう)
その方が気持ちが落ち着いて説得しやすくなるかもしれない、そう思って寝室のドアを開けた。
「っ!?け、謙信様?」
ドアを開けると、謙信様が廊下の壁に背を預けて立っていた。
「ど、どどどどどどうしたんですか?」
(現代の服も似合っててかっこいい……ていうか、私の格好…恥ずかしすぎる)
現代の服を完璧に着こなし寝ぐせ一つない謙信様に対し、私はゆるい、どうでも良い服を着て顔さえ洗っていない。
あまりの差に問いかける言葉がどもってしまった。