第24章 謙信の祈り
結果が出る前に諦めるのを良しとしないが、今回ばかりは自然が相手だ。
戦場ならば己の力を最大限に使って勝機をあげるがワームホールはそうもいかない。
1%の数値をあげられる術がない……。
ただただ開いてくれと祈るしかない。
片目から涙がこぼれたが、そのままにした。
どうせここには誰も来ない。
時折訪ねてきた信玄も、病に飲み込まれようとしている。
俺も遠くない先に死ぬだろう。
病ではなくとも、心が死ねば身体も死ぬのだと知った。
始終握り締めている舞からもらったお守りを見つめる。
謙信「……」
最期の瞬間まで舞を想おう。
死した後、500年後に行けるだろうか、それともそのまま無へと帰すのだろうか。
(想うことさえできなくなるのか……)
ゾッとするような絶望の中で祈った。
謙信「あと幾ばくもない命だが、月よ、風よ…舞に届けてくれ。
愛している、この命尽きるまでと」
ざあ、と木の葉を騒めかせて風が吹き、朗らかな舞の声がしたような気がした。