第16章 武将くまたん
家康「あー、断る。なりなりはいらない。
あの娘が作ってくれたんだから大事に持っていれば良いじゃないか。俺の部屋に2体も人形は要らない」
三成「そう言わずに受け取って下さい。このなりなりは家康様にどうしても持っていてほしいのです。
別れ際に舞様は家康様とずっと仲良くして欲しいとおっしゃいました。
私はそれに『はい』と答えたのです。
その約束を違えない証として、勝手とは思いますがどうか持っていて欲しいのです」
どう言っても意見を曲げる気がなさそうな三成に家康は根負けした。
家康「しばらく預かってやる。いいか、預かるだけだ。
貰ったわけじゃないから勘違いするなよ。そのうちお前の部屋に放り込むからな」
三成「ありがとうございます。なりなりが元気にしているか時々様子を見に伺います!
それではお忙しい時に失礼致しました」
三成の表情が鬱陶しいくらいにキラキラ輝き、自分の言いたいことだけ伝えると部屋を出て行った。
家康「おい!人形が元気かどうかなんてあるわけないだろ…って聞いてないし」
はああああ、と大きなため息をつく。
家康は嫌そうに文机の上のなりなりを見る。
それはじゃっくと並ぶように置かれていてニコニコと笑っている。
ことあるごとになりなりの様子を見に来る三成が想像できて心底憂鬱になった。
家康「舞…とんでもない物を作ってくれたな」
それからしばらくの間、薬の整理をする音と大きな大きなため息が家康の部屋から聞こていたが誰も気付く者は居なかった。