第1章 触れた髪
家康「っ!?」
私の涙に気が付いて、家康が目を見開いて驚いている。
家康「なに、泣いてんの」
懐から手ぬぐいを出して、そっと涙を拭いてくれた。
柔らかい布の感触が、家康の優しさをより感じさせてくれる。
「家康、ありがとう。ちゃんと薬飲むよ。
巾着も大事にする。ありがとう、元気でね」
家康「おおげさ。今生の別れじゃないんだから」
「そ、そうだよね。嬉しすぎて涙が出ちゃった。
びっくりさせてごめんね」
家康「…別に。悲しい涙じゃないならいい。
俺や政宗さんが居なくても、のほほんと笑ってなよ」
「へへ、うん」
涙を拭って……ふとある歴史が頭をよぎった。
「…そう言えば三成君がこの間家康にすすめられたっていう本を大事そうに抱えてたよ。
いつまでも仲良くしてね。できれば子々孫々まで、なんてね」
家康「はぁ?なんであいつと子々孫々まで仲良くしなきゃなんないんだよ。
絶対い、や、だ」
「まあまあ、そう言わずに…ね?」
家康「想像するだけで悪寒がするんだけど…」
そう言っていた家康も、数日後駿府へと発っていった。