第11章 看病七日目 愛を交わす(R18)
そんなに跡継ぎを望むなら、伊勢と何故引き離したのか。
伊勢を愛していたのに。
(伊勢となら……いつか子を…)
そこまで考え、絶望する。もう叶うことのない夢だ。
(伊勢と無理やり引き裂いておいて、名も、顔も知らぬ女達をあてがうとは)
屈辱に身が震えた。
伊勢が亡くなって日も経っていないうちに、知らぬ女達が次々と部屋に用意された。
あからさまに誘惑してくる者、恐怖に慄く者、様々だ。
恥ずかしげに微笑む伊勢が浮かんで…儚く消えた。
黒い渦が心を飲み込み、何も考えられなくなる。
信玄の策で寺から舞い戻ったが、俗世の穢れが己をも汚していくようだ。
生涯不犯を誓った時から水面下で姉上に連絡をとっていた。
姉上の子を俺の跡継ぎに欲しいと…。
謙信「俺の血は俺の代で終わらせる。
人を不幸にする不吉な血を次代に繋げるわけにはいかない」
暗い部屋で一人、堅く誓った。