第1章 触れた髪
戦国時代に来てから早4か月。
最初はどうなるかと不安だったけれど、信長様のはからいで武将達の世話役と針子の仕事をいただいてからは日々忙しく、あっという間に時が過ぎた。
お針子さん達から和装のやり方を教えてもらい、洋裁の知識を織り交ぜて仕立てた物はありがたい事に評判が良く、絶えず依頼が舞い込んでくる。
個性豊かな武将の皆には『百面相している』と笑われながらも良くしてもらって、本当に感謝しかない。
素性を明かしていないけれど『国は帰れないくらい遠くです』と伝えたせいか、私が寂しそうにしていないか、皆が気にかけてくれている。
そんな優しい人達に囲まれて戦国ライフを楽しく?過ごしていたある日、私は城下である人に出会った。
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「秀吉さんに頼まれたおつかいも済ませたし、早く終わったから反物屋さんに寄って行こうかな…あれ?」
足を向けた先にある食事処から数人の男性が出てきた。その中に見覚えがある顔があった。
「佐助君…?」
さして大きな声で呟いたわけではなかったけれど、佐助くんは私に気が付いてくれた。
佐助「舞さん、久しぶり。元気だった?」
相変わらずの無表情だったけれど、ほんの少し和らいだ目元から喜んでくれているのがわかった。
「うん、おかげさまで戦国ライフを楽しんでるよ。佐助くんも元気そうだね」
『戦国ライフ』という単語は佐助君にだけ聞こえるように声を小さくした。
佐助「良かった。しばらく安土に来られなかったから心配していたんだ」
現代人仲間の佐助君と話していると無条件に安心して顔が緩んでしまう。
(ん?)
その時、佐助君の後ろに立つ人影に目がいった。