第90章 現代を楽しもう! ❀謙信様の誕生日編❀
「……」
お互いの髪が白くなるまで一緒に居ようという言葉が胸深くまで染みこんだ。
謙信様が格好良いおじいちゃんになるまで毎年こうして誕生日をお祝いしたい。
その頃には私も齢をとっているけど、謙信様に『愛らしい』って言われるようなおばあちゃんになっていたい。
「ずっと一緒に居ましょうね、謙信様」
子供達のはしゃぐ声に混ざり、時々謙信様の声が聞こえる。
愛しい気持ちがジワリと湧き出してきた。
(ふふ、大好き…)
信玄「舞?なーにこんな所で蕩けた顔をしているんだ?
大方『謙信様、大好き』って思っていたんだろう?」
(しまった!ここは玄関だった!)
用事があるって言っていた信玄様が来るのは当然だ。
「お、思ってません。気をつけて行って来てください」
信玄「そうか?おかしいな、俺の読みは正しいと思うんだが」
色っぽい目に流し見られる。
「気のせいですっ」
信玄「困った顔も可愛いが、可哀想だからそういうことにしておくよ」
「そうしていただけると助かります」
信玄様が肩を震わせて出かけて行き、私は逃げるように玄関を後にした。
「なんで皆私の心の中のこと、わかっちゃうんだろう?」
リビングのソファに座り、頭を抱える。
ふと両親が結婚した時に贈られたという高砂人形が目に入った。
両親は髪が白くなるまで一緒に入られなかったけど…
「謙信様と末永く一緒にいられますように」
ずっとずっと先まで、手を取り合って一緒に生きていこう。
毎年生まれた日をお祝いして『また一緒に歳をとれた』と喜びあう日にしたい。
「おじいちゃんになった謙信様か……ふふ」
確かな幸せを胸の奥で感じながら、私は穏やかに微笑んだ。
END