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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第85章 依頼主からの文


三成君には波を現す幾何学模様が入っている黒い生地を選んだ。

歴史書には『徳生』はもともと地方の寺に住んでいた人で、物見遊山に訪れていた家康と、家康の三女、三の姫が牢人に襲われていたところを偶然助けたそうだ。
それが縁で徳川家にとり立てられたそう。

当初『成生』と名乗っていたけれど、家康と姫の命を救った功績と、召し抱えられた後の功績を認められて、徳川から徳の一文字を与えられたと書かれていた。


『成生』も読み方によっては「なりなり」だ。


三成君の『成』を使っている分、『徳生』という名前よりも三成君が生きているというメッセージが強いように思えた。

三成君の特徴のある容姿を変えるのはそう簡単じゃなかっただろうし、名前にまで『成』という字を使っていたら不審に思う人が出てくるだろう。
怪しまれる可能性を少なくするために、『成』という字を『徳』に変えたのかもしれない。

もともとお坊さんだったという設定なら、以前のような綺麗な紫色では不似合いかもしれない。もしかしたら頭を丸めているかもしれない。

そう思って黒地にして、裾に藤の花を刺繍する時に紫色の糸を使った。
垂れている花の咲きにむかって糸の色を少しずつ薄くしてみた。

子孫繁栄を現す紫の花を波の模様に馴染むよう刺繍をいれていきながら三成君を想った。


私を好きだと言ってくれた人。


忘れられそうにないと言っていた言葉通り、居なくなった私をずっと想っていてくれたんだと政宗の手紙で知った。


(ありがとう、三成君)


純粋なその想いに応えることはできなかったけど、人として武将として、三成君のことが好きだった。

家康に子の代、孫の代まで三成君と仲良くしてほしいって言ったのは偶然だったのに…不思議で、とても素敵な縁だ。


(尊敬している家康を支え、とっても綺麗な奥さんと、子供達に囲まれて……幸せなんだね、三成君)


三成君の着物を縫っている間、こみあげてくる嬉し涙に何度も手が止まった。

ずっとその幸せが続きますように、胸いっぱいの想いを針にこめた。


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