第83章 嵐の前の日常
信長様達を乗せた船が次の年にも来航したので聞いてみたけど、乗組員が変わってしまっている上に言葉が通じず、結局3人がどうなったのかわからずじまいだった。
船が無事であったことから海を渡ったのは確かだけど……あれから6年。
戻って来ると言っていた佐助君もまだ戻ってきていなかった。
「あの信長様だもの。どこに行っても上手くやってるんじゃないかな」
蘭丸「うん、そうだよね」
「寂しいよね、ここには安土の人はいないから……」
本当は佐助君じゃなく蘭丸君が信長様と行くはずだったのに…
蘭丸「そんなことないよ。舞様は謙信殿の奥さんだけど、安土の人間だって思ってるよ?
それに無邪気に遊んでくれる舞様の子供達も可愛いし、何気に皆俺のこと気遣ってくれてるでしょ。
寂しいなんて言ったら罰が当たるよ」
にっこり笑う蘭丸君に無理している様子はなかった。
「ふふ、良かった。何かあったらいつでも相談してね?」
蘭丸「舞様に相談事なんかしたら謙信殿に刀をつきつけられそうだよ」
謙信様を思い出しているのか蘭丸君が肩をすくめた。
「あはは、大丈夫だよ。その時は私が守ってあげるから」
蘭丸「女の人に守ってもらうようじゃ、まだまだだね」
信長様達の行方を気にしつつも、私達は笑い合って、支え合って暮らしていた。