第5章 看病三日目 護身術と誓約
(身持ちが堅いのか)
佐助だけではない。信長に毎夜呼ばれ、安土の武将達にも気に入られているという女が貞操を守り抜くのは難しいだろうに、この反応を見る限りでは今のところ守り切れているようだ。
ふっと息が漏れ、我に返る。
(今のはなんだ?)
安堵したのではない、と否定する。
この女の操(みさお)がどうであろうと何の関係もないではないか。
自問しているうちに舞の焦った声が聞こえてきた。
「では伊勢姫様は……謙信様とそうなった時、恥じらいませんでしたか?
女性なら誰でも恥じらうと思うんですけど…」
真っ赤に頬を染め、動揺を押し隠すような問いかけに面食らった。
何故なら………
謙信「俺と伊勢は体の繋がりはなかった」
お互い惹かれ合い恋仲になったが家臣達の監視が厳しく、伊勢は日が傾く頃には部屋に戻された。
(触れたいと思っても、一度も叶わなかった…)
あの頃の、激しくもどかしい熱が今でも身を焦がすようだ。
(伊勢……俺はお前に触れたかった)
暴きたかった。身も心もとじ込めて俺のモノにしたかった。手放したくなかった、絶対に。
俺のせいだ
謙信「……っ」
凍えるような寒さが心を凍りつかせ、動けなくなる。
せっかく舞が作ってくれた料理の味がよくわからなかった……。