第78章 過去からの来訪者
(姫目線)
クリスマス、大晦日、お正月、とバタバタした日々が落ち着いたかと思うと、突然の大雪に見舞われて、毎日雪かきに追われた。
せっせと雪かきしても次の日の朝には元に戻っている。
そんな日が続いて、雪国育ちの謙信様も閉口していた。
やっと針仕事に手をつけられるようになったのは一月半ばを過ぎていた。
「はぁ、お部屋で仕事に集中できるなんて久しぶり」
雪かきの作業はもちろん、雪かきをしている皆のために温かいものを用意したりと何かと忙しかった。
(龍輝と結鈴は毎日楽しそうだけど…)
雪で作った滑り台や、新しく作ったかまくらでお茶を飲んだりおやつを食べるのが日課になっている。
氷柱(つらら)が珍しくて、いつも誰かに『とって』とお願いしては折って遊んでいる。
ばさ…
仕事部屋に夏の間に買いだめておいた糸や布を広げた。
冬の間は農作業ができないので小物類や子供用の着物などを作る予定だ。
女の子向けの布をいくつか選んでいると、
「……ん?」
生地にちりばめられた小花が揺れた。
パチパチと瞬きを繰り返しているうちに揺らぎは何事もなく治まった。
「眩暈かな………ぁ」
数年前の記憶がちらついて、はっと息をのんだ。
(そういえば…生理がきてない…)
慌てて指折り数えてみると予定日を過ぎていた。
大雪に気をとられてすっかり忘れていた。
(もしかしたら……)