第76章 姫の好奇心(R-18)
「佐助君、降ろして!謙信様が死んじゃう!」
佐助「あのくらいで謙信様は死なないから大丈夫」
「蘭丸君…」
蘭丸「だーめ。謙信殿はいつも舞様を困らせるから、たまにはお灸も必要だよ」
「うそ、全然だよ?謙信様はいつも優しいんだから」
佐助「……謙信様がいつも?」
蘭丸「……優しい?」
佐助君でさえ『疑わしい』という顔をしている。
蘭丸「そう思っている舞様の方が優しいんだよ」
佐助「優しくないとは言わないけど、いつもというのは……」
「ほ、本当だってば!!
とにかく早く降ろしてってば!」
龍輝「大丈夫だよ、ほら、パパはもう普通に歩いてるよ」
結鈴「パパ―!鍛錬終わり?
今日も格好良かったね~」
不機嫌そうだった謙信の表情が、結鈴の一声で穏やかなものに変わる。
謙信「休憩をとり、そこに居る不届きな忍びを鍛えることにする」
佐助「蘭丸さんのことでしょうか」
蘭丸「佐助殿のことだよ」
謙信「両方に決まっているだろう?」
佐助「っ、逃げましょう。お試し版・爆音かんしゃく玉だ」
「えっっ?!」
慣れたもので『かんしゃく玉』と聞くと、龍輝と結鈴がさっと耳を塞いだ。
佐助がかんしゃく玉を謙信に投げつけ、屋根から離脱していった。
「ちょ、ちょっと!!私達、どうやってここから降りればいいのっ!?」
二人を追いかけて、謙信の姿も消えている。
舞は子供と三人で屋根に取り残された。
――――
――
丁度港町から仕事を終えてきた信長達がそれを目撃する。
信長「……あやつは屋根にあがり、何を叫んでおる?」
光秀「ふっ、きっと軍神の惚気でも言っているのでしょう。
土産に買ってきた団子を口に入れれば静かになるかと」
信長「ふっ、それもそうだな」
ゆっくりとした歩調で信長達が帰ってくるのが見えて、舞は大きく手を振って『おかえりなさーーーい』と叫んだ。
その両隣で結鈴と龍輝が笑顔で手を振っている。
信長と光秀はやれやれと小さく手を振り返した。