第76章 姫の好奇心(R-18)
謙信「っ、泣くほど苦しいか?」
「ち、違います。本当に馬鹿だったなって…自分で呆れてるんです。
謙信様がくれる快楽以上のものはないのに。
私は、何を求めていたんだろうって、馬鹿らしくて涙が」
謙信「そう責めるな」
「あっ」
頭を撫でられただけで、頭皮の毛穴ひとつひとつにざわっと快感が走る。
「駄目、触らないでください」
触られただけで感じる身体が怖くて涙が出た。
謙信「泣くな」
躊躇いもなく伸ばされた腕にぎゅうと抱きしめられた。
快感でびくつく私の身体を余裕で抑え込んでくれる。
謙信「薬を口にした過去は変えられない。今は薬が抜けるのを待つしかない…わかるか?」
「は、はい。私…本当に…なんてことを…」
寝て起きたら症状がなくなっていたからどこか安心していた。
短期間だけの影響で済んだと思ったのに、まだこうして身体に残っている。
謙信「今は待つだけだ」
言い聞かせるように何度も言ってくれる。
力いっぱい抱きしめられて、そのうち汗ばんできた。
(暑いのか、熱いのか、わかんなくなってきた)
頭がクラクラして思考が回らない。
さっきまでは恐怖を感じていたはずなのに。
これが薬のせいなのかもわからなくなってきた。
謙信「舞の香りが変わっている」
「ん……え?」
謙信様は首筋に顔を埋めて息を吸った。
謙信「拒絶反応を起こした時の汗も、今と同じような香りがしていた。甘い匂いがする」
謙信様が顔を歪ませ、逸らした。
「は、ぁ……臭いんじゃなければ…いいか、な?」
精いっぱいの努力でヘヘっと笑って見せれば、謙信様が労わるように見つめてくる。
触れれば私が反応してしまうから気を使ってくれたんだろう。
(こんな身体になっちゃって…どうしよう)
さっきまでお腹のなかでひとつになってくれれば良いと思ってたのに
今は、どうかひとつにならないでと願う
こんな薬でおかしくなっている身体の中で、どうかどうかひとつにならないで
悲しい考えに至ってしまって、感情が涙になって溢れた。