第5章 看病三日目 護身術と誓約
(看病3日目)
(姫目線)
佐助「舞さんは料理上手なんだね。ガスもないのに大変じゃない?」
「もともと料理は好きなの。
ガスだったらもっと色々作れるんだけどな。
政宗がお城に居た頃はよくお手伝いしててね、そのおかげでなんとかできてるよ」
佐助「そうか。君も安土で色々経験値を上げてるんだね」
「ふふ、だってせっかくだもの。
楽しまなきゃ、でしょ?」
朝餉の後、佐助君の話し相手をしていると謙信様が『出かけてくる』と出て行ってしまった。
「はい、いってらっしゃいませ」
突然の行動だったので見送りに出る暇もなく、声だけかけた。
どこか素っ気ない態度に寂しくなる。
「謙信様、大丈夫かな」
ポツリとつぶやくと佐助君がおかしそうに言った。
佐助「大丈夫。安土に潜入している間、謙信様はいつも単独行動派だから。
今回は俺が寝込んでいるからここに居るけど、いつもなら朝から晩まで帰ってこないんだよ。
謙信様は強いから心配しなくても大丈夫」
「そっか、そうだよね」
(もしかしたら夕方まで帰ってこないのかな)
寂しさでため息をつくと佐助君の目がキランと光った。
佐助「もしかして謙信様の事が好きなの?」
「な、なんのこと?」
佐助「ふっ、舞さんは嘘が下手だな。君の顔に書いてあるよ。
『謙信様が出かけてしまって寂しい』って」
「そ、そんなはず…ないよ」
自分でもおかしいくらい狼狽えてしまい、終いには佐助君から顔を背けてしまった。
佐助「謙信様は男が惚れるくらいかっこいい人だからね。
舞さんが好きになってしまうのも無理ないよ」
「や、好きだなんて言ってないじゃない!凄く惹かれてるけど…」
否定にも言い訳にもならない言葉がでてくる。
これじゃあバレバレだ。
佐助「それを世間一般に好きって言うと思うけどな。
そっか、君は謙信様を好きになったのか。
とっつきにくくてわかりにくい上司を好きになってくれて俺も嬉しいよ」
「佐助君、とっつきにくいだなんて、フ、フフッ」
おかしくて口を押さえて笑う。
ここまで言われてしまったら隠せない。