第76章 姫の好奇心(R-18)

「いつもありがとうございます。
　謙信様に毒見をさせているなんて春日山の方達が知ったら怒られてしまいますね」


一つ一つの皿をとり、匂いを嗅いでいる。


謙信「俺は訓練して毒耐性があるが、舞はないだろう。
　ならば俺の役目だ。それに妻に毒見をさせる男がどこにいる？」


謙信様は焼き魚の身を少しほぐして口に入れた。


「旦那様に毒見をさせる妻もあまり居ないと思いますよ？」

謙信「そうだな。まあ、そう気に病むな」


全部の料理を確かめると小鉢をひとつ、はじいた。

謙信様が『食べても良い』とお膳ごと私の前に置いてくれた。


「あの……そちらの小鉢に何か入っていたのですか？」

謙信「これにはわずかだが催淫済が含まれている」

「サイインザイってなんですか？」


謙信様はお酒にも何か入っていないか確かめている。


謙信「お前たちの時代にもあっただろう？媚薬のことだ」

「び、やく？！え、その小鉢に？なんででしょう…」


間違えて入る代物じゃない。


謙信「ここは時間制だ。滞在が長くなればなるほど宿には金が落ちる。
　交わった後らしき二人が居て、風呂に入り、食事をとったなら、そのまま帰るという流れになろう。
　だがその食事に催淫効果のある料理を紛らせたらどうなる？」


気が付かずに食べたら…？

想像して赤くなる。


「エッチな気分になってしまい、帰るのは延ばして、もう一度……ということですか？
　それで宿も儲かると……」

謙信「そうだ」

「う、うそ……」


利益のために薬を盛るなんて犯罪だ。
頭を抱えていると謙信様が鼻で笑った。