第72章 おまけ
足が痺れているんだけど、なんて言い訳できそうにない。
まだ言い足りなさそうにしている秀吉さんの手前、大人しく立ち上がった。
三成「今日の舞の装いは頭のてっぺんからつま先まで本当にお美しいですね」
「そ、そんなことないよ」
宿でお風呂に入ったから化粧はしていない。
でも髪型だけは不思議で『昨日の髪、可愛かったなぁ』と呟いたら、あっという間に昨日と同じ髪型になった。
さすが魅力200のヘアスタイルはだてじゃない。
光秀「敵国の大将から与えられた着物を着て帰って来るとはお前も随分と肝が据わっているな」
「ち、違うんです。信長様から頂いた着物はあとで安土に送り届けるって言われてとりあげられてしまったんです」
信長「良い。さっさとこっちに来い」
(そーっと、そーっと……)
ビリビリと痺れている足に鞭打って小股で歩く。
まるでペンギンみたいなちょこちょこ歩きに政宗が吹き出した。
政宗「どうした舞、まさか足が痺れてるのか?」
「そんなことないもん!おしとやかに歩こうとしてるだけだよ」
つい強がりを言ってしまった。
秀吉「それは良い心がけだが…ふっ、おかしいぞ、その歩き方」
さっきまで怒っていた秀吉さんまで片手で口を覆って笑っている。
「い、言われなくてもわかってます」
なんとか信長様の前まで移動して座ろうとしたけど、重い着物と自重に、痺れた足が限界を迎えた。
ぐらっと傾いた身体は真正面にいた信長様へ…
(わわっ!?)
余裕たっぷりの信長様は慌てることなく腕を広げ、私を受け止めてくれた。
(び、びっくりした…。間違って信長様に頭突きしたらどうしようかと思った)
あせった心臓がドキンドキンと脈打っている。