第70章 行商人
龍輝「枕持ってきたよ、ママ!寝よう!」
二人が戻ってきた。
「あ、うん」
結鈴「パパは結鈴の隣、早く寝て!」
結鈴が敷布団をポンポンと叩いて謙信様に寝るように言っている。
謙信「ああ」
返事が聞けないままになり不服そうな声で返事をしている。
(ふふ、少しだけ仕返し)
触れてくれなかった理由を1か月以上も教えてくれなかった仕返しだ。
それぞれが横になり、目を閉じた頃……
「謙信様……返事は『はい』です」
バサ!
謙信「本当か?!」
結鈴「もーーーーー、パパ!早く、寝るの!」
謙信「すまぬ…」
起き上がった謙信様に結鈴が猛烈に抗議して、謙信様が謝っている。
「ふふ」
龍輝「……もしかしてママ、今、パパに意地悪した?」
隣に寝ていた龍輝がクスクス笑っている。
「内緒♪おやすみなさい、謙信様、龍輝、結鈴」
龍輝・結鈴「「おやすみーー」」
謙信「おやすみ……」
モヤモヤと疑問に思っていた理由もわかり、久しぶりにすっきりした気分で寝られそうだ。
(飽きられたんじゃなくて良かった。それに……)
謙信様が思う存分愛したいと望んでくれたことは、私の望みでもあった。
そのことが凄く嬉しい。
まだ不服そうな声の謙信様は放っておいて、私は安心して眠りについた。