第70章 行商人
(姫目線)
謙信「おやすみ、舞」
「おやすみなさい、謙信様」
(今夜もこのまま寝ちゃう…?)
子供達が別の部屋で寝られるようになってからは毎晩のように愛してくれていたのに、ここひと月、せいぜい抱きしめて寝るだけだ。
布団も前は1つの布団で寝ていたのに、最近は二組敷いて別々に寝るようになっていた。
最初のうちは『疲れているのかな』と思っていたけど、ひと月も続くと違う気がしてきた。
現に早朝の稽古は熱心に励んでいるし、港町への往復もなんなくこなしている。
(もしかして飽きられた、とか?)
謙信「毎夜抱いたら舞の身体に飽きてしまった」
冷たい表情で言われてしまったら……?
「どうしよう…」
謙信「なんだ?何か困ったことでもあったのか?」
布団の中で悶々と考えていたら謙信様に気付かれてしまった。
「す、すみません!明日作ろうと思っている巾着袋のデザインのことです!お、おやすみなさい!」
謙信「…おやすみ」
(どうしよう、どうしよう?
もしかしてこれが倦怠期?レス?)
いつか来るだろうと思ってたけど、想像していたより早かった。
パニックを起こした顔を見せられなくて、謙信様に背を向けて目を閉じた。