第69章 毛玉の家来
結鈴「そうだね、パパとかママとか、龍輝とかね」
信長「もう一人居るだろう。敏いのか鈍いのかわからぬところが舞の娘だな」
結鈴「え?あ、信玄様かぁ。
この前の怪我、治るまで毎日こっそり飴をくれたの。優しくて面白いし大好き、信玄様」
信長「…お前もゆくゆくは悪女になるのだろうな」
結鈴「あく、じょ?」
信長「なんでもない。ほら、お前の父が心配して家から出てきたぞ。行ってやれ」
手を離すと結鈴が謙信の元へ走っていく。
手に持っていた包みを謙信に見せて、信長に手をふった。
謙信は不承不承ながら信長に軽く頭を下げ、家に入っていった。
信長「終わりに差し掛かっているとはいえ乱世であるのに、この地は忘れ去られたように平和だな」
時の神がいつ動くかわからないという枷を除けば、この地での暮らしは穏やかでそれなりに楽しい。
かつての敵が数軒隣に住んでいるという異常な状態だが、少しの刺激がなければつまらない。
信長「この世の、この場所が平和なのは偶然か?
それとも秀吉、家康…お前達が為し遂げたことの結果か…?」
南西の空を見上げ、信長はしばらくそうしていた。