第4章 看病二日目 効果のない線引
(看病二日目)
(謙信目線)
夜明け前に起きだして剣の鍛錬を済ませ、井戸に水を汲みにいった。
空には星が瞬き、飯炊きをする女達でさえまだ寝ている刻限だ。
水甕の水をいれかえても佐助はまだ寝ていた。
小さな物音にも反応するよう育て上げたが、こんなに五月蠅くしていても目を覚まさない。
いんふるえんざという病がいかに佐助の身体を蝕んでいるかがわかる。
米を入れた釜を持ち、再び井戸に向かう。
雪は降っていないが冷たい風が吹き、空はどんよりと曇っている。
謙信「常ならば晴れぬ天気を疎ましく思うというのに……」
口から吐く息が白く曇り、流れて消える。
何故か昨日帰り際に見た女の顔が浮かんだ。