第59章 それぞれの道
信長「あやつらが舞の言葉を思い出せば、その瞬間に歴史は変わる。あの二人は生きている。気長に待て。
秀吉と三成は神をも欺(あざむ)くかもしれぬぞ?」
愉しむような声を聞いていると、そうかもしれないと流されてしまいそうだ。
信長様の考え方は私と一緒だ。
現代に一人で居た頃、500年前の『あの時』を謙信様が生きていると信じていた。
『歴史上の人物』にはしなかった。
(そうだった。秀吉さんも三成君をまだ生きている。
きっと必死に天下を安寧なものにしようと懸命に生きているはず)
「ありがとうございます、信長様!私、秀吉さんと三成君を勝手に過去の人にしていました。
まだ生きているのに、まだ可能性はあるのに。
歴史が変わるよう、待とうと思います!」
膨らむように気力が湧いてきて、すくっと立ち上がった。
遅れること数秒、信長様は苦笑して立ち上がった。
信長「魂ごとどこかへやったような顔をしていたが、今の貴様はまあまあ見られる。
泣き顔は似合わん。呆けた顔で笑っていろ」
頭をぽんぽんと撫でると信長様は小屋を出ていった。
外から佐助君と信長様が会話しているのを聞きながら、私は心機一転、秀吉さんと三成君の未来が変わるようにと祈った。
(どうか皆の未来が良い方向に変わりますように)