第58章 時の神
佐助「やっぱりそうなのか。結鈴ちゃん、ちょっといい?」
眼鏡を定位置に戻しながら、佐助君は結鈴にたずねた。
結鈴はいつの間にか光秀さんの膝上に乗ってご満悦な顔をしている。
結鈴「なーにー?」
(結鈴が関係あるの?)
佐助「結鈴ちゃんはワームホールに飛び込む時、何を考えていたか覚えてる?」
結鈴は『えへへ』とはにかみながら光秀さんを見上げ、光秀さんは静かにその視線を受け止めている。
(え、まさか…)
結鈴「みつひでさんに会えるかな、って思ったの。ずっと会ってみたかったから」
私によく似た顔がふにゃっとなった。
光秀「………」
光秀さんは黙ったままで、結鈴の頭を撫でている。
俯き加減の表情からは何も読み取れなかった。
佐助「そして…龍輝君。君はワームホールに飛び込んだ時、何か考えていた?」
皆の視線が一斉に龍輝に集まった。
(もしかして……)
龍輝「僕はねー、信長様に会えるかなぁ?って思ってたんだ。
だってママのお話聞いてたら、すっごくかっこいいんだもん!」
私と龍輝は信長様に、結鈴は光秀さんに会いたいと思ってワームホールに飛び込んだ。
結果、それぞれ思い描いた人物と出会った。
「じゃあ結鈴と龍輝は私と同じ力があるの…?遺伝?」
そんなこと考えたこともなかった。
ワームホールを発生させる力があることにさえ未だに信じきれていないのに、その力が結鈴や龍輝にもあるなんて…。
ワームホールの中で離ればなれになったのは私の力が未熟だったからじゃなくて、
それぞれ思い描いた人物が違ったから…?