第58章 時の神
(?目線)
“ 愛している ”
この言葉を口にしたことはない
人を愛するとはなんなのか
理解せずとも生きられた
その言葉を口にしないからといってなんの障害もない
だが舞を見る度に胸の奥が湧きたってくる
腕の中にとじ込めたい
朗らかな声をずっと聞いていたい
滑らかな肌に触れたい
心の内をもっと知りたい
誰にも使ったことのない言葉が容易く口から出そうだ
だが舞はあの男しか求めていない
あの男の話をすると、輝かんばかりのきらめきを体中から放つ。
ならその男に寄り添い、輝き続けろ
その男の隣でずっと笑っていろ
気に入ったからと強引に自分のものにするだけが全てではない
好いた女の幸せがこの手の内に無くとも、
その頬を赤く染める役が己でなくとも、
貴様が幸せであるならそれでいい
心底好いた相手だからこそ、そう思うのだろう
愛している
俺に『愛をする』ことを教えたのは貴様だ