第57章 双子
佐助「舞さん、見事なヘッドスライディングだったね。無事で良かった」
佐助は舞に声をかけるのを忘れず、直後クマの首の後ろに全体重をかけて苦無を突き刺した。
クマがひと際大きな声をあげ倒れ伏した。
謙信「……」
念のため死んでいるかを確認する。根元まで埋まった苦無を佐助が引き抜いてもクマは身動き一つせず身体を弛緩させている。
肩でしていた息をなんとか静め、信長に歩み寄る。
なぜここにこの男が居るのか
なぜ舞と一緒に居るのか
胸にふつふつと黒い炎がくすぶり始める。
信長は舞に落ち着くよう諭していた。
こちらに背を向けたのは惨い遺骸を舞に見せないためか、それとも俺が居る事に気づかせないためか…。
呼吸を整えている気配がしていたので、静かに歩み寄る。
(怯えている舞をこれ以上刺激したくはない)
逸る気持ちを抑え、だがこれ以上他の男に触れさせるのは我慢ならなくて、俺は愛しい女の手を掴んだ。