第8章 恋愛って何だろう
瑠璃ちゃん、と声をカーテン越しにかけてくれたのは、願ってもない一二三さんの声だけど、私は複雑な気持ちになった。
「帰ってください。今は会いたくない。」
昨日、久しぶりに心臓の発作を起こしたとき、私は一二三さんに言わないでとお兄ちゃんに頼んだ。
元気な私で会いたいから、病気なんて自覚したくないから。
「発作、最近ひどいみたいだね、昨日も起こしたんだよね?」
その言葉に、ベットから飛び起きた。
何で知ってるの・・・?
「わかってるなら帰ってください。」
突っぱねるしかなかった。
増えた点滴も、蒼白な顔も見られたくない。
「心配で帰れないよ。顔見せて?」
なんでそんなにやさしくするんだろう・・・。
「何が面白いか知らないけど、申し訳ないけど関わらないで。」
そういってベットに潜ると泣いてしまった。
「す、好きな人のことを面白がるわけないし、関わらないわけないだろう!!」
え・・・いまなんて?
好きな人?
ベットの布団をはぎ取った一二三さんの顔は真っ赤で。
「てか!スーツ!ジャケットは?」
ラフなチノパンできてる一二三さんに私は何度目かわからないびっくりをした。
「先生に頼んだんだ。交際を。
その時の条件で、スーツ以外で会えたらゆっくりこうさいするのはOK ですって言われて。」
それが昨日の電話で、すぐに行動したんだとか。
「瑠璃ちゃん、俺はね?キスや手をつなぐことだって人より難しい人間だよ。君が外に出れないことと一緒さ。
でも、俺たちは病気と闘いながら生きている。」
それでも、って続けようとする一二三さんと目を合わせると、一二三さんは最後にこう言った。
「前向きに俺っちと付き合うこと、考えてほしい。」