第12章 身の危険
宇航:「哥哥、僕だけでなく美鈴も呼んだ理由は何ですか?噂と関係あるんですか?」
アンソニー:「その噂が、良からぬ方向に動いてね。過激なファンがSNSを使って拡散させているんだよ。これがその内容の一覧たよ。」
美鈴と宇航は内容を見てゾッとした。
ありふれた嫉妬の内容から始まり、一際目を引いたのは、自分が本当の婚約者だと名乗る人物。
韓国でもサセンペンは居るが、流石に人に害を加えることを考える者はいなかった。
ウォレス:「数年前からファンから気を付けてってメールやDMが届くようになったんだよ。最初は事務所に贈り物が届く位で他のファンと変わりなかったけど、どんどんエスカレートしてファンの間で危険視されるようになった。」
事の内容は、危険視されている人はアンソニーと仕事で関係のあるカナダの会社社長の令嬢で、クリス・ワーグという。ワーグはかなり強引な仕事で財を成した人間で自身の妻も人質のように奪ったと噂されていた。
そんなワーグの一人娘は、彼にそっくりでわがままを通り越し幼い頃から好き放題で誰も咎めることなく成長した。
欲しいものは全て手に入れる。
クリスは自身の婚約パーティでウォレスと出会い一目惚れした。
婚約者との結婚を望んでなかった彼女は、父のワーグにウォレスと結婚したいと詰め寄った。
ワーグはこの件に関してはイエスと言わなかった。
ワーグはアメリカ進出を目論んでいた。カナダ政府の高官である婚約者のエバンスとの結婚はなくてはならないものだった。
今まで許された自分の思いが通らずクリスが無謀な行動に出るのは目に見えていた。
時限爆弾のようなクリスは、ファンの間で危険視されるのは遅くなかった。
ウォレスのいく先々に現れては目障りなファンを排除していった。結婚から逃げれないと悟ったクリスは身代わりをたてウォレスとの結婚を果たすために動いている。
宇航:「警察は動いてないんですか?」
アンソニー:「インターポールが証拠を掴んで接近できないようにして、出国できないように父親のワーグもしたけど、偽造パスポートでどうも出国したらしい。指名手配をかけているから入国はできない。だからこそ何をしてくるか分からなくてね。」