第29章 午後11時。愛欲の奴隷*
「やっと気付いた? こないだは多分強過ぎたんだろうから、少し弱い方。 気持ちは嬉しいけど、真弥の場合はこういうので慣らしたほうがいいよね」
だからさっき里の記憶なんかが頭に浮かんだの?
酷い。 そう抗議する私を、あやすみたいに頬をすりすりと手のひらで撫でてきた。
「んん…」
「おれのこと考えてくれてるんでしょ? いつもすぐにくたってなっちゃってた真弥のこと、こっちも考えたんだよ」
「………琥牙?」
話し声が遠くになってく。
どこか行ってしまいそうな気がして夢中でその腕を掴むと、彼の重みと体温を感じた。
衣擦れの隙間で合わさる肌が焼けそうな程の快感に包み込まれる。
「ぁあ……ん…あっ。 気持ち……い」
同時に、私のお腹に当たっている滾り。
腰が引けそうなほど硬いそれを、押し付けてくる。
「大体、こういうのがうちに普通にあるって女性側に無理させない配慮だと思うんだよね。 おれたちの場合……って、聞いてる? 律儀にずっと目つぶって…かわいいんだから」
彼の手が私に添えられ、その部分に誘導された。
指先に彼自身の感触。
なぜ琥牙がそうしたのかよく分からなかった。