第23章 狼の里にて 前編*
その歓迎会、と呼ばれるものもまた若干カオスだった。
いくら見慣れているとはいえ。
朱璃様が私と二ノ宮叔父甥コンビを紹介して下さったあと、広間では口々に言葉が交わされていた。
「人の姿の者が増えるのは良い事なのでしょうが、やはり少しばかり違和感も感じます」
「外からの仲間が増えるのは、もう何年振りだろうねえ。 だが琥牙様と雪牙様も認めているならば問題無いのだろ」
現在ぎゅうぎゅうに住人が集まっているここでは、私たちの他はみな狼である。
その数、ざっと30ばかりだろうか。
彼らは私たちの元にやってきてはフンフン匂いを嗅ぎに来たり声を掛けたりしてくれる。
元々警戒が強いのだろうが、その中にも隠し切れない好奇心。 そんなものが垣間見えた。
『今々は私の親族という事にしておいてくれるか』
紹介される前に言われたそんな朱璃様の言葉を不思議に思いつつも了承したが、どう見ても無理があるのだろう。
「真弥どのは朱璃様とは全く違いますなあ。 人間とはそんなものなんですか」
ええ、まあ。 そんな曖昧な返事をして笑顔を作る。
身長差に限ってはどうしようもない。
「二ノ宮さん、ささもう一献」
宴が始まってからしきりにお酒を勧められているのは二ノ宮叔父。
「保って言ったか? 替えの皿を持ってきてくれ」
いきなり他の狼にパシらされているのは二ノ宮甥、つまり二ノ宮くんだ。
上座の中央を空けて、座している朱璃様の隣に私の席がしつらえてあった。
あの真ん中の席は、今は不在であるここのリーダーのものなんだろう。
それはさておき二ノ宮くんの扱いを不思議に思って見ていると、朱璃様がお酒をくいとひと口口に運び、その理由を説明してくれた。
「真弥はみなから見ると客人だが、あの二人はここに属する者になるわけだからなあ。 力の有無で対応が変わるのはここでは仕方の無い事なんだよ」
「でも、そんなのすぐに分かるものなんですか」
「狼というものは本来無駄な争いを好まん。 その代わり瞬時に相手の力量を測る能力がある。 それ位は知っておろう?」
そういえば、以前似たような事を伯斗さんや琥牙が言っていた。