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あなたの…【鬼滅の刃】 短〜中編

第3章 望むままに  【煉獄】



最終選別を抜ければ、そこは過酷な鬼殺の世界。
毎日命の保証がなく、睡眠、食事を確保できない時もある。
その生活に慣れるのには鬼殺隊に入ってからでも充分だ。


「杏寿郎、私はそれでもいいと思うよ。」

『いえ!いつまでも子どもではいけないと思うので!』



一度決めたらなかなか曲げない子だからなぁ…と、奏は肩を下げた。





・・・・・・・・

眠る前、杏寿郎は縁側に座り星空を眺める。

どうしたら早く大人になれるだろうか。
やっぱり、師範は俺のことは子どもだと思っているのだろう。
「そのままでいい」
この言葉はまだ、子どものままでいろと言うことなのだろうな…。


はぁ、とため息を吐くと、すぐそばに奏が立っていた。
湯浴みを済ませたのか、まだ少し濡れた髪を手ぬぐいで拭いている。


「どうしたの?ため息をついて。」


『どうしたら貴女に相応しい大人に早くなれるかと思いまして。』
そんな事を言えたならどれだけ気持ちが晴れるだろう。



『…家族を思い出しておりました。』
そんな嘘をついていた。

「そう。」

『母の事を…』

まだ、貴女の心に入り込めないと言うのなら、貴女の望む子どもらしくいよう。

「杏寿郎、おいで。」

奏を見ると、両手を広げて待っていた。
戸惑いながらその中に入っていくと、ぎゅっと抱きしめれる。
湯上がりの石鹸の匂いがふわりと香る。

「寂しかったんだね。」

もちろん奏はそれが嘘だと分かっていた。
密かに杏寿郎が自分に想いを寄せていることも。
そんな幼気な少年を抱きしめるなど、随分と私もいけない大人だなぁと思いながら。
杏寿郎に言い訳できる環境を整えて抱きしめる。

『はい。』

杏寿郎は奏に嘘をついた事を少し後ろめたさを感じながら、それでも奏に抱きしめてもらえるなら、温もりを感じられるなら…それでもいいと思った。


本当は早く大人になりたいけど…
こうしてもらえるなら、まだ子どものままでいようと。


貴女の望むままに。



ーfinー
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