第3章 望むままに 【煉獄】
『…198、199、200…』
「…ろう。杏寿郎。」
ハッとして杏寿郎は素振りを止める。
『師範!すみません!気がつきませんでした!』
そう言って頭を下げる少年。
奏の継子、煉獄杏寿郎。
杏寿郎の父、槇寿朗が炎柱だったが、妻を亡くしてから気を病んでしまい、同じ炎の呼吸の使い手として奏が炎柱を後任した。
そして、その息子の杏寿郎を継子として面倒見ている。
利発でとても快活な子だ。
どんなに厳しい鍛錬にも弱音を吐かずについてくる。
「それほど集中していたって事だね。
でも、鬼殺隊に入ると、1人じゃない時もある。連携もとらなくてはいけないから、もう少し周りを見れるといいかもね。」
『…はい!』
大きな目を見開き、ハキハキした声で返事をする。
そんな杏寿郎に奏はにこりと笑顔を向ける。
奏の笑顔に杏寿郎の身体はぶわっと熱くなり、胸は高鳴った。
(不甲斐なし!!!!)
『師範!!少し走って参ります!!』
「ん?え、あぁ。気をつけて!」
杏寿郎は時折急に走りに出かけて行く。
熱心なのは良いけれど、まだ発達途中の身体…。
すこし、休憩も必要だなぁ。
明日は自分も非番だし、たまには休みにしよう。
そう思っていると、門に気配を感じる。
水柱の木之元 和一(きのもと かずいち)が立っていた。
「あら、木之元…どうしたの?」
「いや、特に用というわけではないさ。
最近、煉獄さんの息子さんが継子になったんだってね。」
穏やかな笑顔を向ける木之元。
現の水柱と炎柱は穏やかで隊士からも慕われている。
「そう。とっても良い子よ。」
「13歳…だったか?まだまだ子供だと思って油断してると、取って食われてしまうぞ。」
「まさか。こんな色気のいの字もないのに、そんなわけないでしょう。」
そんな冗談を言っている2人は、他所では噂される美男美女。
しかし、当の本人達にはそんな自覚などない。
すると、そこに杏寿郎が戻ってきた。