第19章 番(つがい)
「おう。今日は土産を持ってきたぜ。」
格子の間から差し出されたのは、
小さな赤い木の実。
「…もっといいものかと思ったわ。」
「はっ。これだからお高くとまった女は。
…いいから、食ってみな。」
そう言われて私は一粒口に入れる。
「うっ…!!すっぱ…!!」
口の中にはその酸っぱさを流そうと、唾液が次から次へと増産される。
顔をしわくちゃにさせていると、はははと彼は高らかに笑う。
「これはな、疲れてると酸っぱく感じるんだ。
疲れてなければ甘く感じる。
そんなんだと、相当疲れてんな!早く休んだほうが良いぜ。」
「休めるはずないでしょう?この世界にいちゃ。」
「…そうだな。」
私はじとっとした目を向け
「貴方も食べなさいよ。」
と促す。
「俺は飽きるほど食ってるからな!
いらねぇ!!」
そう言ってシュッと姿を消した。
「あ!狡い!!」
でも、すぐに笑いが込み上げてくる。
彼といるととても楽しい。
私、彼が好きなんだ。
その恋心に気づいた時、
同時に虚しさも込み上げてくる。
「叶わぬ恋…か。」