第19章 番(つがい)
「何か探しもの?」
私はちょっと興味が湧いて話しかけてみた。
「あぁ、ちょっとな。」
「教えてくれたら私も探すわ。」
「いや、物騒なもんだからな。遠慮する。」
あまりのそっけない返事に、少しだけ苛立ちを覚える。
(何よ。この世界ではそれなりに美しいって評判なのよ!失礼しちゃうわ!!)
そう思っていると、彼は私をチラリと見る。
そして、二度見した。
(ふふん。私の美しさに気づいたかしら。)
「お前、異国の奴か?」
思い描いた言葉じゃなかったが、どうやら向こうも少しは興味を持った様子。
「…違うわ。両親は外国の血だけれど、私は生まれも育ちもこの国よ。だから、外国の言葉は知らない。」
「へぇ。」
この日の会話はこれだけ。
また彼はどこかの屋根へと移ってしまったから。
「何だったのかしら。」
でも、私の中で小さな感情が芽生え始めていた。
男を見るのはこの世界にいれば初めてじゃない。
なのに、ちょっかいを出してくる訳でもない。
そんな彼に、少し興味が湧いてしまった。