第13章 鳥籠の鳥 2 ❇︎ 【煉獄】
次の日の朝。
杏寿郎さんはいつもと何ら変わりなく、
にこやかに「おはよう!」とコーヒーを飲む。
「テストも今日が最終日なんだ!今日さえ頑張れば解放される!」
「そうなんだ…。よかったね。」
嬉しそうに話す彼を見て、落ち込む気持ちを抑えながら微笑んだ。
自然に笑えているだろうか。
「それじゃ行ってきます!君も気をつけて!」
「お互いに。行ってきます。」
電車のホームで別れ、行き先の違う電車に乗り込む。
出勤ラッシュよりも少し早い時間の電車。
満員電車には乗ってほしくないという、杏寿郎さんの願いで少し早いが、この時間に乗っている。
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いつも通りに解説員としての仕事をこなし、
なんてことなく1日が過ぎる。
「西ノ宮さん、お疲れ様!」
「あ、尾崎さん。お疲れ様。」
元気に挨拶してくれる彼女は尾崎さん。
23歳で、私と同じく解説員の仕事をしている。
長めの前髪も一緒に括ったポニーテールの似合う可愛い子だ。
「西ノ宮さん、最近彼氏さんとはうまくいってます?
あの…私の愚痴聞いてもらえますか?というか、聞いてくださいー
!」
「う、うん、どうしたの?」
正直、今の私に幸せな愚痴を解消できるだろうか。
「こんなこと、あんまり人に言えないんですけどね…。
最近彼としてないんですよ。しようって言っても、気分じゃないとか言って。
もう私のこと好きじゃないのかな…」
「してない…って。」
「セックスですよ!もう、はっきり言わせないでください〜」
きゃーっと顔を隠す彼女に、ストレートに言わせて申し訳なく思う。
そしてこの話は自分の話かと思った。
同時に杏寿郎さんは私のこと好きじゃなくなった…?
という考えが巡った。