第9章 現代鬼殺隊 〜プロローグ〜
「まぁまぁ、予定がないならそんなに急いで去ろうとすんなよ。
たまには茶でも飲んでけば?」
宇髄が出入り口の戸を閉めて奏の頭をポンポンとする。
こんなところを他の女子に見られたりしたら、大変だ。
「い、いえ!私はただの一生徒なので!失礼します!!」
宇髄の脇をすり抜けるように、戸を開けて出て行く。
「宇髄…君って奴は…。あの様子でも俺に好意を持っていると?」
好意を持っていたら、意地でもこの部屋に居座ろうとするだろう。
奏の様子はいち早くここから出たいようだった。
「…まぁな。でも、あいつ俺たちにあんな態度だったか?何か…隠してるには…違いねぇな。」
そういうと、くんと鼻を鳴らす。
「ってか、あいついい匂いすんな!」
「宇髄、変態みたいに…」
と言いかけた時、煉獄にはこの匂いに覚えがあった。
「この匂い…どこかで嗅いだ…。」
「おい、誰だよ。俺を変態だっつったの。」
ジト目で見てくる宇髄を無視し、どこで嗅いだ匂いか、記憶を辿る。
…そして、思い出した。
「よもや…。」
奏は気づいていない。
自然と自分自身から菫の香りがしている事を。
そして、それがきっかけとなり全てが動き出す事を。
〜つづく〜