第9章 現代鬼殺隊 〜プロローグ〜
夜の帳が下りる頃
神社の境内に
人影が2つ。
一つは人影と言っても人間ではない。
現代に蔓延る"鬼"だ。
もう一つの人影は黒猫の半面を付けた黒ずくめの女。
チャキッと音を立てて刀を抜刀する。
菫色に輝く刀身。
『グルル…お前も喰ってやらぁ。』
「できるものならどうぞ。」
半面の女は刀を構える。
——夢の呼吸 壱ノ型——
——一睡之夢——
するとふわっと菫の香りが辺りに漂う。
鬼がその匂いでいい気持ちになった時
ザンッ
と頸を刎ねられた。
しかし、鬼はそれに気付くことなく塵となり消えていく。
そう。
一睡之夢…それは一瞬で眠らせ、夢の中にいる間に斬りつける。
だから相手は気づかずのまま、この世から消える。
女はヒュンっと刀の血を払い刀を鞘に戻した。
すると一羽の鴉が女の元に降り立つ。
鴉の羽は左の一枚だけが白かった。
『任務完了、任務完了。』
鴉がそう叫ぶと、女はふっと口角を上げた。
「帰りましょう、八重(やえ)」
そう呟いて女は境内の闇に消えていった。
少し癖のあるポニーテールを揺らしながら。
彼女と入れ替わりに境内に男がやってきた。
金色で毛先に緋色が混じるハーフアップに結われた肩までの髪。
鍛えられた逞しい体。
彼も背中に日本刀のようなものを背負っていた。
「ここに出たと情報があったのだが…」
辺りを見渡すと、しんと静かな境内。
しかし、目を凝らすと鬼の第一関節だろうか…塵となり消えゆく指があった。
「…誰かが…既に討ったということか…?」