第63章 望まれた暁には死を
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「ちょっと!!!!」
お願いだから、話を聞いて。
『後で』
「何で?」
『今必要なことか?』
「そう!」
『今……必要なのか?』
別に今じゃなくてもいい。
でも、
「今じゃなきゃ嫌だ!」
千春がこの話を続けさせたくないのは分かってる。
でも、私は知らないといけない。
「紅さん」
「はぁい?」
「私のお父さんは」
私は馬鹿だし、アホだし、能無しだってことはわかっている。
未だに7の段とか、割り算は苦手だし、簡単な漢字だって読めないし書けない。
「……その、」
『後にしよう』
授業に出席してないし、自動車免許の筆記試験だってコンブに助けて貰ったし。
「ちょっと。聞いてやんなさいよ」
『ダメ』
「…あのねぇ」
『あんたは何も知らないからそう言えるんだ』
「何を知らないって言うのよ」
馬鹿だけど……馬鹿だけど!
私の予想が正しかったら、私の力の所以にも説明がつくし、帳の件だって、暗殺のことだって、説明をつけることが出来る。
『何も、知らないんだよ!』
「そーゆーのって」
「私の!お父さんって…」
言え。
それがどんなに悲しいことだとしても。
「…悟の、お父さんなの?」
息を飲む。
心臓がとび出そうだ。
「そうだよ?」
『っ』
あっけらかんと答えるママ。
「良かったねぇ、五条家の血を引いてて」
それに加えて、こんなこと言っちゃって。
『それ以上言うな!』
「な…別に大したこと」
『大したことだから、言いたくなかったんだ…!分かれよ!』
千春が「大したこと」と言ってくれて安心した。
この心の痛みと緊張は、あっていいものだと言ってくれたみたいで。
「…そっか。悟のお父さんがパパなんだ…」
「あんまり嬉しそうじゃないね」
「嬉しくは、ないかな」
私の血に五条家の欠片が入っている。
だから、私は帳に入れた。
──悟と似てるから。
だから、命を狙われた
────理由は知らない(馬鹿って本当に困る)
だから、悟と術式が似てる。
────これもよく分からない。