第62章 私がそう言った
”あのね…ご、じょうと”
”…”
”お付き合い、することになった”
私が今日も千夏のそばに居るのは、千夏に幸せになってもらうため。
だから、千夏が好きな奴と結ばれて、心底嬉しいはずなのに、少しだけ寂しかった。
けれど、やっぱり五条悟の隣で笑う千夏が1番幸せそうで。
涙なんて出ないくせに、泣きたくなった。
けれど、運命はいつだって千夏を地獄へ落とそうとする。
”ね〜ぇ?ちょーっと、千春とお話したいんだけど”
”話しかければ出てくるよ”
”…2人で話したいんだぁ”
”2人で?何話すの?”
”千夏が喜ぶこと♡”
勝手に素敵な妄想を始めた千夏は、ニヤニヤしながらトイレに閉じこもった。
面倒だったけれど、彼の根が真面目であることはとうの昔に知っている。
”お、じゃがいもだ”
”で、何?”
”……話しておかないといけないことがある”
どうせ千夏に関わることだ。
けれど、私が千夏に関して知らないことなんて限られていて、それは私がずっと欲しがっていた情報。
”誰なの”
”さすがぁ。察しがいいし、端的で助かるよ”
千夏の出生。
孤児である彼女の生まれを知ることは、私にはほぼ不可能であった。
”…この間、千夏の術式を聞いた”
”まだ言ってなかったのか”
”僕も千春に嘘つかれてた側の人間だからね。この目じゃ術式までは分からなかったよ”
私が千夏の存在を隠すのにあらゆる手を使った証。
六眼くらい誤魔化せなくては、完璧には程遠い。
”烈日呪術。どっかで聞いたことあるなーって思って、色々読み返したんだ”
夕暮れの暗い部屋。
五条悟はアイマスクを取った。
”あれは五条家相伝の術式だ”
私がそう言うと、彼は小さく微笑んだ。
”……知ってんなら言えよな”
その目を俯かせて。
千夏の術式が烈日呪術であることは、過去が教えてくれた。
けれど、その過去がいくら事実だとしても、それを受け入れてしまったら、それは、もう────