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【呪術廻戦】infinity

第9章 陳腐な七色、儚い紅



(これ、死んでんじゃね?)

(おーい。生きてる?)

(返事ないし、死んでるね。これは)



懐かしい夢を見た。

そんなに私は夏を謳歌したかったのだろうか。

それとも、単に去年の夏が楽しすぎたからなのだろうか。



「おっ。生きてた」

「おはよー」

「人騒がせな奴だ」



目が覚めて聞こえてきたのは、懐かしい声。

ずいぶん久しぶりに聞く声だった。



「勝手に、殺すな…」



体を起こすと節々が痛い。

変な倒れこみ方をしたからなのか、特に腰骨が痛い。



「今何時?」

「七時」

「サザエさん、終わっちゃってるよ」

「録画してるに決まってんだろ」



最近はこの時間に帰れないことがあったから、毎週録画設定にしてある。

撮り溜めを消化する目処は、まだ立っていないけれど。



「…みんな、元気だった?」

「それはもう。二人のせいで怒られた回数が増えてるくらい」

「そのほとんどは悟のせい。間違ったことを伝えるな」



久しぶりの会話に感動する暇がないほど、いつも通り過ぎる。

本当に、いつも通りで。

そこには私の居場所がちゃんと残されていた。



「なんだー。心配して損した」

「どういうこと?」

「みんなが先生みたいな顔になってたらどうしようって思ってたから。単に先生としか話してなかったからだと思うけど」



五条が差し出してくれた手に捕まり、立ち上がった。

立ち眩みしたので、しばらく目をつぶった。



「……私らのほうが心配してたよ」



目を開けると、いつものみんながいた。



「一体何があったんだよ」



普段から自分のことしか考えていない人たちなのに。

どうしてそんな顔で私を見てくるんだろう。



「先生に聞いても知らないの一点張りだし」

「悟は知ってる素振りだけ見せて、何も教えてくれない」



五条は首に手を置いて明後日の方向を見ていた。



「千夏」



なんでみんなはそんな顔をするの?

いつも通り、バカにしてきていいんだよ?



「話して」



こんな雰囲気なんて作らなくていいのに。

そんなことされたら。



「千夏は何を抱えてるの?」



もう。

吐き出したくなるじゃないか。
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