第58章 特別編①
私は嫉妬深い方では無い…と思う。
そもそも、悟は女遊びをしない。
私が去った後も数回遊んだ程度で、とうの昔に全て関係が切れているとのこと。
それに加えて、硝子や歌姫も含めて、誰かと出かける際は報告してくれる。
その報告に信頼を寄せているのは前提で、そもそも「報告いらないよー」と言ってしまう始末。
だって、万一悟が他の女性に手を出したら、(悟のことは大好きだけれど)お付き合いは解消させて頂くから。
悟はそれがとても怖いみたい。
可愛い奴だ。
1度手を出した男は信用してはいけない、と多方面から言われているし、私も全くその通りだと思っている。
「…あれ、どうした?」
けれど、そんな私がピキっと…ピキッ!となってしまった。
これはそんなお話。
少し遡ると、その原因は明らかで。
歌姫が硝子と遊ぶために東京に来た時のこと。
「え、僕の好きなタイプ?」
私、硝子、歌姫、悟を初めとした高専職員専用のまぁまぁ広い部屋を使って休憩をとっていたとき、誰かが悟にそんなことを聞いた。
あくまで、聞こえる距離に居ただけで、聞きたかった訳では無い。
けれど、耳を意識的に傾けてしまったって、硝子との話が一旦止まる。
「なんだっけー、いい子そうな子」
歌姫は絡まれて心底嫌そうな顔をしていることだろう。
「前髪特徴的な、ほら、いるじゃーん!」
…。
ま、まぁ、タイプなんて人それぞれだし?
なんて思う一方で「私じゃないんかい!!!!」と、全細胞が総ツッコミ。
「いい子…」
歌姫は少しの間悩むと、五条が示した子の名前を口にした。
「ああ、三輪ね」
「ああ、そそそそそ…!」
その瞬間、私の頭がピキっと逝ってしまった。
硝子がボリボリと食べている煎餅の音がやけに響いていた。